日本では、そばは「そば」または「蕎麦」と書けば、それが何であるか分からぬ人はいないでしょう。
これが、そばの原産地である中国ともなると、ご案内のとおりかの国は漢字の国ですから、 土地土地によりいろいろな文字の表し方があるのだそうです。 それがまた、土地土地のそばの品種ともからみ合って複雑ったらありゃしない。

蕎、蕎麦、烏麦、花蕎、伏蕎、華麦、落麦、省麦・・・・・
そばはタデ科の植物であり麦とは違うのに、麦と表現しているところが面白いですね。

また、内陸部のチベットやヒマラヤでは古くから苦蕎麦(今、日本でも話題になっている韃靼〈ダッタン〉そば)が栽培されており、 このそばと区別するために普通のそばを「甜蕎(てんきょう)」「甜蕎麦(てんきょうばく)」とよんで区別しているのは、興味をひかれます。 「甜」は甘いという意味なのですね。
日本で広く栽培されているそばが、甘蕎麦と呼ばれる所以です。

突然ですが、話はフランスに飛びます。
日本テレビ系列「世界マル見え特捜部」のファンの方多くいらっしゃることと思います。 楠田さんに所さん、それにビートたけしのズッコケがおもしろいですよね。当地では毎週月曜夜8時から入ります。
ずいぶん前に放映されたものなんですが、フランス人シェフがスタジオに来てクレープを焼いていました。
ゲストが旨い旨いと盛んに食べていましたが、このクレープの生地にそば粉が入っていると楠田さんが言っていたのでちょっと驚きました。 何という名前のクレープなのか忘れましたが、フランスのある地方の伝統料理だといっていましたから、昔からあるのでしょうね。
ということは、フランスでもそばが栽培されているのだろうか?・・・と思ったのです。早速調べてみました。
「蕎麦考」(永友 大著)より引用いたします。

やはりフランスでもそばは栽培されているのです。
「 Bre Sarrasin 」日本語読みで「ブレ サラザン」と発音するのでしょうか? 「ブレ」は最終的には「ブレッド」に行き着きたくなりますね。 そうすると「 Bre 」は小麦を意味することになるのでしょうか。 「サラザン」は「サラセン」でしょう。
しからば、サラセンの小麦ということになりますね。
原産国中国からヨーロッパへそばを伝えたのは、サラセンの商人だったのでしょうか。

同じヨーロッパでもドイツ語では、「Buchweizen」、「Buch」はドイツ語で「Buche」のことで、 ブナの実のことを指すのだそうです。 さすれば、ブナ小麦ということでしょう。
では英語ではどうかというと、これが「Buck Wheat」。 後半の「w」で始まる言葉はいづれも小麦を意味しますね。

そば粉そばの原産地である中国でもやはり「麦」と表現していることを思えば、 洋の東西を問わず、人間の思いつきや発想は同じなのかなと感心してしまいます。
これは、世界の主食は何といっても小麦で、小麦は粉にして食されるものですから、 同様にそばもやはり挽いて粉にして食べるということから、 ○○麦と表現するようになったのだと思いますが、読者はいかにお考えになりますか。

日本では、そばは大陸より伝播してこの方、粒のまま煮てお粥のようにして食べていたそうで、 粉に挽いても蕎麦掻き(そばがき)のように団子状にして、やはり煮るようにして食した。

そば粒今のそばのように細く切って食べるようになったのは、 江戸時代になってからというのですから、ちょっと驚きです。
文字こそ中国から伝わったそのまま「蕎麦」と表しますが、長年にわたり粒のまま食していたというのは、 これは何といっても日本は瑞穂の国、お米は粉になどせず粒のまま食べますからね、米の影響が大きいのでしょう。

粒食と粉食の文化の違いは、こんなところにも影響しているのですね。

そばっておもしろい!!